アカデミズムから遠く離れて

『企業と広告』(2009-5)に、少子化で生存競争が激化している大学の広告宣伝活動について記事が出ていた。

大学がコンサルティング・ファームや広告代理店の餌食、じゃなくてお客様になり始めてすでに何年も経っているが、最近ようやく業界紙・誌に分析記事が出始めてきた。

受験生向けには、そのユーザー(聴取者)の多くが中高生であるラジオ広告が効果的だと考えられている。実際、教育・医療サービス・宗教分野で2008年に前年を上回った4マス媒体はラジオだけだったらしい。

その一方で、最近良く目にするのは大学の新聞広告だ。『企業と広告』の上述記事によると、以下二種類の広告が新聞媒体ではメインになっているらしい。

*【親向けブランディング広告】
朝日新聞によると、

大学を中心とする教育の広告は、学生だけでなくその親を対象としたものが多いという。いわば「親向けブランディング」ともいえ、そのためメディアの中でも信頼性の高いと言われる新聞を活用するわけだ。

「教育関連の特集を組むと、子供の親からの反響が多い。信頼性のある媒体だからこそ、教育へのアプローチは他の媒体よりも力が入っているのではないか」(広告局)とみる。(31頁)

*【社会への貢献度をアピールする記事広告】
それとは別に最近増えているのは、大学がいかに社会へ貢献しているかをアピールする広告のようだ。

同記事が例に挙げているのは、朝日新聞主催の大学トップマネージメントフォーラム。

2008年は「大学と人材育成」をテーマに首都圏の8大学が参加し、大学が優秀な人材を育成していくにはどうすればよいかを各大学が議論し、それを新聞側で記事広告にし掲載、同時に大学側からの純広も掲載したらしい。

これまでは単発的に電車内交通広告や看板広告をやっていた大学も、「いや〜、これからは継続的に広告を出稿して社会貢献度をどんどんアピールしないと生き残れないので、もっと大規模に予算を増やしていきましょー。他の大学さんはもっとやってらっしやいますし。エヘ。」、なんていう代理店の営業トークにつられて広告を増やしていくのだろうか。

                                                                                                                                  • -

*【留学生向け広告】
同記事には取り上げられていなかったが、海外から留学生を呼び込むための広告も益々増えていくだろう。

以前、地方大学にいる留学生の多くが授業に出席せず、実は大部分の時間労働に従事している実態が話題になっていた。マスコミはいつもの通り批判的な調子で取り上げていたが、大学の学籍を隠れ蓑にして働く外国人が増殖するのは先進国ではある意味仕方がないことだ。大学側も偽学生であれ収入が増えるので、黙認してるのだろう。

また、以下のように私費留学生の数を増やした国立大学には運営交付金が増額される。そのため、留学生の取りあいが激化することが予想される。私立大学は広告出稿を含めたさらなる努力が必要となるだろう。

留学生増で予算増 文科省が交付金に新ルール

留学生を増やせば、使える予算も増えます――。文部科学省は、国立大学が私費留学生を増やした人数に応じて国の運営費交付金を多くもらえる仕組みを作り、各大学に通知した。09年度から実施する。条件を良くすることで福田前首相が提唱した「留学生30万人計画」の実現につなげたい考えだ。

交付金のうち、各大学の意欲的な取り組みに応じて算定される「特別教育研究経費」の一つに、「留学生受け入れ促進等経費」を設けた。国が奨学金を出す国費留学生は、従来も受け入れ人数をもとに交付金を出していたが、私費留学生についても交付金措置によって教育面などの支援を促すようにした。

文科省の担当者は「私費についてはこれまで各大学の努力でやってもらっていた。支援は、留学生の受け入れを増やすインセンティブと考えている」と話す。

09年度の場合、07年度の留学生数や過去の平均増加率を基に、これだけ増えるだろうという「想定値」を文科省が各大学に提示。あらかじめ想定値分の交付金を措置しておき、達成できないと頭数に応じて返納してもらう。

例えば東京大は、学部や大学院への私費留学生が07年度の1345人より、138人増えると想定。学部正規生は4万2千円、大学院博士課程正規生は16万8千円といった単価で計算し、約1600万円を措置する。

30万人計画は、大学の国際化などを進めるため、福田前首相が昨年1月に提唱。昨年5月1日現在で12万3829人(過去最高)だった留学生を2020年をめどに30万人に増やすことを目標にしている。(大西史晃)

しかし、広告はドラッグのようなものだ。広告費用を回収するために、さらなる広告活動へと無限のループへと嵌っていくはずである。そして、その負の無限ループから脱げ出せるのは、今回の金融危機によって各企業が目の当たりにしているような最終的な破綻が訪れてからである。

そして、そこではお決まりのように教育の重要性が叫ばれ、本来救うべきではない大学を救うために、膨大な税金が使われることになるのだろう。

いつまで同じことを続けるつもりなのだろうか。