苦境の30代

生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ より

苦境の30代

研究者でいえば研究室の主宰者になるのが競争に勝とうと思う人の成功の第一歩ですが、たとえ成功してもそのあと絶えず研究費を獲得したり、そのための論文を発表したり、また研究室での働き手を確保したり、と絶え間ない格闘が必要です。

しかし、主宰者の路線に30代後半で入ろうともしない、入りたくても入れない、もしくは本人は入ろうと頑張っても周囲の判断は難しい駄目、入れないという、人たちが多数になってしまうのです。
この多数の人たちをどうするのか行政がちゃんと方策を考えていないと、研究者になろうとする若者は決して増えないでしょう。増えないどころか、減るでしょう。科学技術立国などといっても先が暗ければ若者は来ません。

しかし、目を転じれば、日本の社会どこをみても同じような問題があるようです。ですから、どこにいっても類似の問題を抱えた、苦境の30代の人たちが多いのでしょう。

つまりより収入の多い管理職的な職に就ける人たちの絶対的な数が非常に減っているのでしょう。ずっと一研究者でいたい、と願う人は決して少なくなくても、そのような人たちの居場所がなかなかないのが、公的研究機関の難しさです。

しかし、この問題は、社会構造の変化と言うよりは、まさに地球規模で起きているグローバル化が日本人の就業構造に深々と影響を与えていると考えたほうがいいようにおもいます。

戦前、食いつめた農家の次男や三男は満州やあちこちの植民地、もしくは南米や北米に移民で行きました。現代、ちがったかたちで同じようなことが起きてくると思わざるをえません。労働問題というか労働運動が政治活動と結びつくべきなのだと思います。この問題を解決しようとする優れた指導者が出てくるといいのですが。

一方で、いやがおうもなく、すこしでも収入の多い職に就こうと考えるなら、苦境の30代の人たちは、日本の外に出ることも真剣に考えざるをえないでしょう。中堅的な管理者として、日本人くらい優れたひとたちは、なかなかいないと思うのですが、その能力が狭い日本国内では十分に利用されにくい、というのがいまの国情なのだとおもいます。